Kyoto University 21st Century COE Program Genome Science 21世紀COEプログラム「ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成」
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「ゲノム科学と構造生物学」

京都大学大学院薬学研究科
創薬科学専攻構造生物薬学分野
加藤 博章

 ポストゲノムの時代を迎え、タンパク3000プロジェクトの実施など、タンパク質の立体構造を解析することが一部のプロの手から離れて一般化し始めている。タンパク質結晶化試薬のキットなども販売され、精製タンパク質を用意すれば、誰でも結晶化の実験を行うことができるようになった。結晶ができれば、シンクロトロン放射光施設へ出かけてX線回折強度を測定するのも当たり前になり、構造決定までに必要な時間も驚異的に短縮されてきた。しかし、単に立体構造を決定しただけでは必ずしも機能の理解にはいたらないことから、立体構造を起点として機能研究を進めるための新たなアプローチ法の開発がポスト構造ゲノム科学の課題となっている。
 我々は、SPring-8など放射光X線の特徴を活かし、ラウエ法を中心とした時間分割X線結晶構造解析によって、酵素反応中に次々と出現する寿命の短い反応中間体などを酵素もろとも視覚化することを行ってきた。また、1Åをはるかに越える分解能での超高分解能X線結晶解析を行うことにより、酵素でも水素の構造を決定し、基質認識や反応加速との関わりを精密に議論できるようにしてきた。
 本講演では、単に立体構造を決定するためのX線結晶解析ではなく、分子機能を解明するために展開した我々の構造生物学研究を紹介するとともに、今後の課題について議論する。