Kyoto University 21st Century COE Program Genome Science 21世紀COEプログラム「ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成」
   ホーム   概要   組織   研究   教育   活動   アーカイブ


藤井 信孝
富岡 清
竹本 佳司
阿久津 達也
馬見塚 拓
京都大学 大学院
薬学研究科創薬科学専攻
教授

竹本 佳司

 化学情報を系統的に解析して創薬研究を行うためには、生体高分子と多点で相互作用可能な新たな親性基(ファーマコホアー)の探索と、 それらを適切な空間に配置した化合物群の構造活性相関を調べることが必要となる。本研究は、標的とする生体高分子と強固にかつ選択的に 相互作用する低分子化合物を探索する情報技術として、新規な創薬テンプレートとファーマコホアーを開発し、薬物のデザインに応用することを目的とする。

1. プロテアーゼ様作用を有する機能分子の設計と新規ファーマコホアーの探索
 生体機能の維持をつかさどる生体分子の中で、その数と種類、機能の多様性の点で最も重要な創薬標的分子の1つがプロテアーゼである。 我々はその中でセリンプロテアーゼに注目し、その活性部位ならびに酵素反応機構を参考にして、類似の機能を有する低分子触媒の設計と合成を行い、 生体高分子の低分子化とモデル化に成功した。現在、有機合成化学的な応用として、セリンプロテアーゼが主に行うアミドの加水分解反応以外の種々の 合成反応への適用拡大を図るとともに、それらの反応で得られた生成物が元のプロテアーゼ類の阻害剤として利用可能かどうかを検討し、酵素阻害剤として 利用可能な新たな ファーマコホアーの発見と新規阻害剤の開発を目指し研究を行っている。

2. 新規創薬テンプレートとなる 環状化合物の新規合成法の開発
 立体配座を固定化した環状構造を有する新規創薬テンプレートの合成手法を開発し、ライブラリー合成に展開することを目的として研究を行っている。 はじめに、 HIVやSARS等のプロテアーゼ阻害剤の開発を目標として、水酸基、グアニジン基、芳香環部の三成分を三方向に配置したモデル化合物の合成を行った。 次に、多種多様のファーマコホアーを導入できる多官能性環状創薬テンプレートとして、Type 1とType 2をデザインした。合成に関しては、キラルなイリジウム触媒を用いた位置およびエナンチオ選択的なアリル位ヘテロ原子導入反応を見い出しているので、それを基盤として続くラジカル反応やRCM反応、Diels-Alder反応を駆使して、 創薬テンプレートの合成を検討中である。

3. プロテアソーム阻害活性を有する天然化合物の全合成研究
 プロテアーゼの一種であるプロテアソームが細胞内情報伝達において重要な役割を担っていることが知られている。これまでに、プロテアソームに対し強力な阻害活性を示す種々の有機化合物群が見い出され、その作用機序の違いも明らかにされてきた。最近、プロテアソーム阻害剤の中から新しいタイプの抗癌剤が見い出され、さらに抗アルツハイマー病や種々の抗菌・抗ウイルス治療薬としての利用も期待され注目されている。そこで、我々はプロテアソーム阻害剤として作用機序の異なるomuralideとTMC-95A等を標的化合物として選び、それらの全合成ルートの確立と共に、情報伝達機構の解明と阻害活性の選択性の向上を期待して、コンビナトリアルケミストリーを利用した多様な誘導体合成への応用を検討する。