21世紀COEプログラム・ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成

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 ケモゲノミクス [ English | Japanese ]
藤井 信孝
富岡 清
竹本 佳司
上杉 志成
環境ゲノミクス 薬理ゲノミクス
藤井 信孝
京都大学 大学院
薬学研究科創薬科学専攻
教授

藤井 信孝

    ケミカルプロテオミクスを基盤にしたゲノム情報収斂型創薬化学

     ゲノム情報を集約して見いだされる創薬標的に対して有効性の高い医薬品を開発するためには、蛋白質化学に立脚した創薬リード創出のための効率的な“翻訳プラットフォーム”の確立が国家的視点からも急務である。本プロジェクトではこの観点から“ゲノム科学とケミストリーの融合”を計り、ケモゲノミクスを基盤にした創薬化学の研究・教育拠点形成を目指す。
     具体的にはケミカルプロテオミクスに立脚した創薬基盤の革新という一つの座標軸を設定し、1)包括的機能ゲノミクス・バイオインフォーマティクスを活用した創薬標的の化学的同定、2)環状ペプチドをリエゾンとする高分子ペプチド・蛋白質の低分子化および立体配座固定創薬テンプレートへの展開、3)有機金属化学を活用したペプチドの“高活性非ペプチド化”のための精密有機合成手法の確立、4)膜貫通型レセプタ−構築原理の解明とレセプターの動的挙動解析、5)再構成人工受容体系の開発と創薬リードスクリーニングへの活用、という項目に分けてこれらの有機的統合のもとにゲノム情報収斂型創薬研究を推進している。
     上記の研究の実践として、癌、エイズ、リウマチ等各種の難治性疾患との関連が指摘されている 7回膜貫通型CXCR4-ケモカイン受容体に対する高分子ペプチド性拮抗剤の低分子化、非ペプチド化研究を実施しており(図1)、当該研究拠点で世界に先駆けて見い出したCXCR4-ケモカイン受容体の特異的拮抗剤をケミカルプローブとしてHIV感染、固形癌の転移、血液癌の増殖、リウマチの増悪等の疾病や生理的な恒常性維持に関連する同受容体の役割を明らかにしてきた。また最近生体内安定型CXCR4拮抗剤を用いて、UC San Diego校との共同研究により、70年来の謎であった二次リンパ節Germinal CenterにおけるDark ZoneとLight Zoneの機能を解明した(Nature Immunology, 5 , 943 (2004))。一方、脂質二重膜を反応場とする新規な膜蛋白質化学合成法を開発し(Chem. Commun., 2004, 607)、CXCR4の完全化学合成を目指した研究を実施している(図2)。
図1   図1
    図 1 ペプチド性CXCR4アンタゴニストを例とする立体配座固定テンプレートを用いた高分子蛋白の低分子化と非ペプチド化
 
    図 2 7TM-GPCRの完全化学合成を目指した脂質二重膜担持型ケミカルライゲーション法

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