Kyoto University 21st Century COE Program Genome Science 21世紀COEプログラム「ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成」
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薬理ゲノミクス環境ゲノミクスケモゲノミクス
事業推進担当者
辻本 豪三
乾 賢一
金子 周司
五斗 進
金子 周司
京都大学 大学院
薬学研究科生命薬科学専攻
教授

金子 周司

神経系に発現する TRPチャネルの機能に関する研究

 ヒトゲノム解読によって始まった未知なる遺伝子の探索とその機能解析の過程において、多数のイオンチャネルが発見されている。その中にあってTRPチャネルは細胞内Ca2+濃度、各種二次メッセンジャー、酸化還元状態、各種感覚刺激など多種のシグナルに応じて開口するCa2+透過性チャネルファミリーであり、様々な細胞の機能や生死を決定づける重要な膜輸送タンパク質であることが分かりつつある。また、いくつかのTRPメンバーは神経系に特異的に発現することがわかっているものの、その病態生理学的意味はほとんど明らかにされていない。 本研究室では、中枢ニューロンに特異的に発現し、活性酸素種、細胞内Ca2+濃度、リン酸化およびIP3受容体との共役などによって複雑に開口が制御されるTRPM2/7およびTRPC3/4/5チャネルに着目し、これらカチオンチャネルの活動制御プロセスと、ニューロンにおける発現の生理的意義、さらには病態モデルにおける関与を時間空間的に評価している。
イオンチャネルの活動がTRPMのように酸素ラジカル等によって制御されるという現象は、ニューロンの分化、シナプス形成、細胞死などのメカニズム研究に新しい観点を提供する。また、TRPCチャネルは胎生からシナプス形成までの間に強い発現を示すことから、ニューロンの分化およびシナプス形成に重要な役割を果たしていることが期待され、新しい創薬標的の創出を目指している。 イオンチャネル創薬を活性化するための研究戦略

生命科学用語オントロジーの研究

 生命科学領域において 、 ほとんどの研究成果は論文という文字情報として公表される。最近のように研究が加速し、情報量が指数関数的に増大している状態では 、 重要な情報を専門家の努力と判断に頼って解読する方法はすでに限界を迎えている。さらに、ゲノムやタンパク質の配列情報が正規化データベースとして蓄積され 、 コンピュータによって情報の解読や計算が可能となっている現状とは対照的に、医学研究報告に記述された人智は有効利用されないまま蓄積され続けている。もし医学情報の解読にコンピュータを用いた自動抽出の力を活用したいとするなら、事物や事象を記述する専門用語の概念体系(オントロジー)が英語と日本語の対応を含めて整理、共有されることが必須となる。
 本研究室では 、 独自の文献コーパス解析に基づいた生命科学領域の学術用語についてオントロジーを構築し 、 英日対応シソーラス(概念の上下関係を含む類義語辞書)を世に広く提供することによって医学研究報告の自動解読やsemantic web技術の発展を促進する目的の情報科学的研究を行っている。