ゲノム情報科学研究教育機構
  留学体験記(平成17年度)
フンボルト大学 橋本 浩介
 ドイツ人の精神や哲学は森から生まれたともいわれるように、現在でもその国土は豊かな自然に恵まれています。首都ベルリンにおいてもそれは例外ではありませんでした。特に市の南西に広がる森は深く静かで、ものを考えるのにとてもよく、訪れるたびに心地よさを感じました。首都近郊にこれほど巨大な森が存在することは驚くべきことです。一方、市の中心部では、先の大戦で受けた銃痕をそのまま残す古い建物とともに、少数の近代ビルも見られます。自然や歴史において興味深いこの土地で、私は他の3人の学生達とともに交換留学生として 3ヶ月間を過ごしました。

 滞在中に所属していた研究室は、フンボルト大学のTheoretical Biophysics分野で、主に生体内物質のネットワーク解析を専門としていました。背景の異なる研究室で、限られた期間にどのような研究を行うかは難しい問題ですが、受け入れ先の教授であるHeinrich先生の配慮により、現地の研究者と共に行えて、期間にも合ったテーマを選ぶことができました。私の場合は特に、極めて親切なBernd Binderというポスドク(日本の助手のような役割をしていましたが)と共に研究することができ、非常に運がよかったと思います。日本での研究とはかなり違ったテーマに取り組んだため、研究を進める上で、その分野の専門家であった彼の知識や経験に頼ることが多く大変勉強になりました。加えて、滞在した家の手配から生活上の細かいことにまで気を配ってくれました。ドイツ語のイントネーションを強く反映し、ゆっくりとした調子で話される英語は、彼の穏やかな性格をよく表していました。しかしその一方で、オーガニック料理だけを食べ、テレビや新聞をほとんど見ないという彼は、政治や社会、哲学に独特の意見を持ち、専門外のセミナーにもたびたび出かけていくという力強さも持っていました。彼を通して知ったドイツ社会や文化は、一般的なものではなかったのかも知れませんが、惹かれる部分が多く、心動かされることもしばしばでした。

 昨年のボストンに続き 2度目となった今回の短期留学では、生活上の困難もそれほど感じることなく快適に生活でき、研究に取り組むことができました。これは、前回の経験があるとともに、受入れ先の教員及び学生の方々が、ボストン以上の親切さを持って接してくれたからだと思います。ここで行った研究成果は先日行われた日本の学会で、ドイツ研究者とともにポスター発表することができ、今後も協調して研究を続けていく予定です。

 最後にこの留学を主導してくださった教授の金久實先生と Reinhart Heinrich 先生に深く感謝致します。

ドイツの森   力強ささえ感じさせる深く静かに広がる森。