Kyoto University 21st Century COE Program Genome Science 21世紀COEプログラム「ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成」
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環境ゲノミクスケモゲノミクス薬理ゲノミクス
事業推進担当者
金久 實
藤 博幸
Prof. KAWASAKI
加藤 博章
大高 章
大高 章
京都大学大学院
薬学研究科創薬科学専攻
助教授
大高 章
SARS-CoVのゲノム・タンパク質情報を基盤とした抗SARS-CoVペプチドの創製

 医療・保健衛生の格段の進歩にも拘らず、世界のグローバル化に伴い、人類は新興ウイルス性疾患の脅威に曝されている。このような状況下、新興ウイルス性疾患に対する治療法の迅速な確立体制の構築は、緊急の検討課題である。さて、COEプログラムの支援を受けた本研究では、新興ウイルス性疾患の一つであるSARSの原因ウイルスであるSARS-CoVを対象とした抗ウイルス剤の開発とその開発戦略の一般化について、ウイルスゲノム情報を基盤とし、検討を加えた。本研究では、従来のワクチン開発やウイルス学的な知見を基本とした治療薬開発ではなく、ウイルス同定とほぼ同時に明らかになったウイルスゲノムあるいはウイルス構成タンパク質情報を基盤とし研究を進めた。本研究は次の概念を基本とする。すなわち、ウイルスは生物と無生物の境界に存在し、タンパク質分子を主要構成パーツとする分子マシナリーとして捉え得る。従って、ウイルス構成タンパク質の機能を詳細に検討することにより、この機能阻害を通じた抗ウイルス剤のデザインと広く他のウイルスに対する一般化が可能であるという考えに基づいている。
図1
図1 複合体形成に必要なHR2由来SR9配列とその誘導体

図2
図2 SR9とSR9EK1の阻害機構について
 そこで、SARS-CoVが標的細胞に感染する際に用いるタンパク質複合体(HR1-HR2 complex)を焦点に、この複合体形成阻害剤が抗ウイルス剤に結びつくと考えた(図1)。具体的には本年度は次の事項:
1. SARS-CoVゲノム情報からの感染成立に必要なタンパク質複合体配列の類推;
2. ペプチド合成を利用した複合体形成必要配列の絞込み;
3. 絞り込まれた天然配列(SR9)の抗SARS-CoV活性評価と誘導体化;
4. 合成ペプチドを利用したタンパク質複合体形成の物理化学的検討;
5. 高活性抗SARS-CoVペプチド(SR9EK1)の創製;
6. 感染成立におけるタンパク質複合体機能の類推(図2)等について検討を加えた。その結果、現在知られている化合物群の中では最強の抗SARS-CoV活性を示すペプチド性化合物(SR9EK1)を見出した。さらに、SARS-CoV感染のタンパク質レベルでの分子機構について若干の知見を得るに到った。

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