Kyoto University 21st Century COE Program Genome Science 21世紀COEプログラム「ゲノム科学の知的情報基盤・研究拠点形成」
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辻本 豪三
乾 賢一
金子 周司
五斗 進
京都大学 大学院
薬学研究科生命薬科学専攻
教授

金子 周司

 金子研究室ではイオンチャネル・トランスポータといった膜輸送タンパク質を対象にした分子薬理学的研究に おいてゲノム科学やバイオインフォマティクスを情報基盤として活用している。また、ライフサイエンス辞書を構築し、公開サーバの運営を 行っている。

ゲノム情報が物語る膜輸送タンパク質のポテンシャル
 膜輸送タンパク質は、酵素、受容体と並んで、薬物の作用点となりうる機能生体分子である。しかし現実には、膜輸送タンパク質はあまり重要な 創薬標的として認識されていない。これには2つの大きな理由がある。一つは、酵素や受容体には内在性リガンドが存在し、それらをシードとした 誘導体や阻害薬の設計が可能であるのに対して、膜輸送タンパク質の多くには天然の高親和性リガンドが存在しないためである。もうひとつは、 酵素や受容体では基質の化学変化や結合といった無細胞系での高感度な指標によってリガンドの生物活性を予測できるのに対し、膜輸送タンパク質は 物質の膜輸送という,生きた細胞でなければ測定できない煩雑な実験がスクリーニングを敬遠させている。
 しかし、各種の推計に依れば(図1)、既存の治療薬のうち膜輸送タンパク質を作用点とする薬物の割合に比べて、全遺伝子に占める 膜輸送タンパク質の推定シェアは2~3倍も高い。すなわち、膜輸送タンパク質はゲノム創薬の標的として、開拓の余地が大いに残されている ジャンルであることを意味している。新薬物の創製により、それをツールに用いた新たな局面の研究が可能になることを考えると、 膜輸送タンパク質を対象にする生命科学は将来的に極めて大きなポテンシャルを有している。
 当研究室では、以上の発想に基づいて、種々の膜輸送タンパク質について、治療薬ターゲットとしての妥当性評価(validation)を推進し、さらに民間会社とも数多くの共同研究を行い、ゲノム創薬の実現を目指している。

図1 治療薬の作用点:現状と可能性

ライフサイエンス辞書とは
 金子が主宰する「ライフサイエンス辞書プロジェクト」では、過去10年来、大量の文献情報から情報科学の手法を用いて解析した用語を元にして生命科学用語データベースを構築し、 派生的に制作できる電子辞書をインターネットで無償公開している。この電子辞書WebLSDは1日3万件以上の利用があり、将来は様々な研究データベース、ポータル、教育資源との提携に よって新メディアへの応用、知的資源の 社会への還元、生涯教育への貢献等を計画している。